『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』について語る ― 2021年02月08日 23:10
昨年6月にETV特集「パンデミックが変える世界~台湾・新型コロナ封じ込め成功への17年~」という番組が放送されました。台湾の感染対策はとても興味あるし、その第一線で活躍している人たちの姿を知りたかったので満足するものでした。
登場する方々は感染対策においてシビアな仕事を担っているはずなのに、その表情はいたって柔和で不思議と親しみが伝わってきます。登場したひとり、デジタル技術者の唐鳳(オードリー・タン)に強く興味をいだいたのはこの番組がきっかけです。
そしてオードリー・タンへのロングインタビューを元にして作られた本が師走に出るというので早速購入したのがこの本です。
『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』
昨年買った本のうち間違いなくベスト3に入ります。リズム感が心地よく、本の世界に没頭しているうちにオードリーの考えにぐんぐんインスパイアされていくのが分かります。
翻訳は早川友久と姚巧梅となっています。読みやすい文章に仕上がっているのは訳者の尽力によるところが大きいはずです。
本の構成を下に記します。
===ここから===
はじめに・目次
序章 信頼をデジタルでつないだ台湾のコロナ対策
第1章 AIが開く新しい社会―デジタルを活用してより良い人間社会を作る
第2章 公益の実現を目指して―私を作ってきたもの
第3章 デジタル民主主義―国と国民が双方向で議論できる環境を整える
第4章 ソーシャル・イノベーション―一人も置き去りにしない社会改革を実現する
第5章 プログラミング思考―デジタル時代に役立つ「素養」を身につける
終章 日本へのメッセージ―日本と台湾の未来のために
===ここまで===
SARSで失敗を経験した台湾が、新型コロナ感染対策に際してどのようにデジタル技術を活用してきたかが語られていると想像してこの本を手にとりました。しかしデジタル技術に割かれた文字数はそれほど多くなく、現在の台湾の成立にまつわる歴史的背景の解説が多くを占めます。
改めて目次を見てみると、「信頼」とか「より良い人間社会」とか「民主主義」、あるいは「一人も置き去りにしない社会改革」といった言葉が並んでいます。
なるほど、題名からしてこの本は「未来」を語るものでした。
民主化運動や投票のこと、人びとが社会との関わりを持つことの重要性を取り上げているのは未来を射程としているからだと気づきました。こういう知性を行政に取り込んでしまう台湾からは学ぶことが多くありましょう。
3度読みましたけど、読後の爽快感はなかなかのものです。
ところで、お気楽に旅行ができるようになるのはいつになるのかな。
台湾に行くことがあれば、台湾バナナと台湾ラーメンは現地の夜市でぜひ食べてみたいです。(オイオイ、台湾ラーメンは名古屋メシだろ。)