タイヤ内圧調整によるラップタイムに関わる影響の検証2025年01月03日 06:00

タイヤ内圧調整によるラップタイムに関わる影響の検証

【緒言】
 スポーツ走行する際のタイヤ内圧は、季節を問わずほとんどのサーキットにおいて温間230kpaに設定していた。この内圧設定については確たる裏付けはなく、高くも低くもない当たり障りのない数値にしておけば無難だろうと適当に決めていただけである。内圧を固定していることに趣味的な含意を込めるとすれば、運転技術の進捗を判断するには可能なかぎり走行条件を一定にして、時系列で観察していくことが不可欠との認識を持っているからである。タイヤが消耗した際に同じ銘柄のタイヤで更新しているのは同様の理由による。
 内圧の高低がタイヤの接地特性に影響を与えることは経験的に分かっているが、影響の度合いについてはこれまで検証したことはなかった。そこで今回は内圧を4種類に分け、それぞれのラップタイムを比較することにした。

【方法・手段】
1.車両状況
 車両:トヨタ86 Racing(ZN6)
 タイヤ:MICHELIN PILOT SPORT 4S 225/45R17
2.試験方法
 試験は2024年11月13日(水)、晴天下の美浜サーキット・クニモトで実施した。タイム計測にはサーキットから貸与されたトランスポンダーを使用した。
 走行開始時の内圧は、240kpa、220kpa、210kpa、200kpaの4種類に設定し、前後とも同じ値とした。
 1本目の試験前のみウォーミングアップとして4周走行した。
 出走直前に内圧を指定数値に合わせ、アウトラップの次の周回から連続周回して各ラップタイムを計測した。他車との譲り合いでフル加速していないラップは外れ値として除外した。
 記録した項目は、走行開始時刻とラップタイム、走行後の内圧である。

【結果・集計解析】
 数値の単位は、内圧はkpa、ラップタイムは秒である。
 除外対象となった周回は200kpa走行時に発生した1ラップのみであった。
 各試験でのベストラップは「」表示とした。

設定内圧:240
・開始時刻:9:18
  1:51.318
  2:50.328
  3:50.169 *
  4:50.705
  5:50.566
  6:51.144
・平均タイム:50.70
・終了時内圧:260

設定内圧:220
・開始時刻:9:34
  1:50.338
  2:49.671
  3:49.377 *
  4:50.113
・平均タイム:49.87
・終了時内圧:230

設定内圧:210
・開始時刻:10:08
  1:49.959
  2:49.157 *
  3:49.422
  4:50.002
  5:50.107
  6:50.695
  7:51.033
  8:50.949
  9:50.452
・平均タイム:50.20
・終了時内圧:220

設定内圧:200
・開始時刻:10:44
  1:50.539
  2:49.857
  3:49.611 *
  4:49.735
  5:49.912
  6:49.752
  7:50.297
  8:50.039
  9:50.060
 10:49.950
 11:49.720
・平均タイム:49.95
・終了時内圧:210

【検証】
 内圧240kpaはラップタイムは明らかに遅かった。
 総合でのベストラップは内圧210kpa走行時に記録した。
 200、210、220それぞれの平均値からは優劣を明確に示唆する結論を得ることはできなかった。

【考察】
 これまで使用してこなかった210kpa、200kpaといった低めの内圧を重点的に検証したいとの背景があり、それぞれ9周、11周といったまとまった周回を試みた。
 内圧240はステア初期での反応が早くフィーリングは良いものの、旋回時のグリップは低く感じた。スポーツ走行する場面では240は高すぎる印象があった。
 内圧200〜220に関してはどれも似たような感触でハンドリングに違いを見出すことはできなかった。深く考えずスポーツ走行を楽しむだけなら内圧200の一点張りで良いと感じた。
 今回の検証では、試験開始から試験終了まで2時間近くの時間差があり、朝から昼にかけて気温、路温とも上昇していた。途中給油なしの連続走行なので車両重量は減る一方であった。これら要素のため、試験の厳密性は担保されていないのが実際である。
 すべての試験において2周目か3周目にベストタイムが出ている。この知見を活かせば、現在の仕様なら4周ごとの試験を繰り返せば不確定要素を減らした信頼度の高い検証が可能になると考えられる。内圧の調整幅に関しては、10kpa刻みでは違いが不明瞭だったことから、30kpa刻みとするのが妥当と考えられる。
 200kpaより下の内圧は検証していない。また、前後で異なる内圧にしての測定はしていない。これらについては次回以降の課題とする。

【利益相反】
 開示すべき利益相反はない。

【謝辞】
 この試験は株式会社ラックが主催する走行会に参加した際に実施した。当日は参加台数がフル定員に達していなかったことに加え、参加ドライバーの技量から事故誘発の可能性は低いと判断されたことから、グループ分けしないことが決定された。そのため各自の責任のもと、午前・午後とも3時間枠の完全フリー走行となった。
 このような配慮があったゆえ、時間的制約なく、構想どおりに試験することが可能となった。運営スタッフ各位に感謝します。

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