極論で語る2016年02月01日 23:30



タイトルと著者名だけで本を買ってしまうことがあります。この本はそんな風に手にしたひとつです。


ベースとなる知識が豊富というだけでなく、読み手を引き寄せて離さない文体は相当練られて生み出されたものなのでしょう。
こんな感じでまえがきが始まります。
=== ここから ===
  きょくろん【極論】
  (1)極端な議論.また,そのような議論をすること.極言.
  (2)つきつめたところまで論ずること
               [大辞林 第二版(三省堂)より] 
=== ここまで ===

私たちがふつう極論と聞いてイメージするのは(1)のケースだと思います。(2)については確かにそういう意味があると知ったところで、実行するには体力や知力を尽くさないといけません。消耗します。しかし面白いのは断然(2)です。

この本の第二版が出版されたとき岩田健太郎医師がブログで紹介しています。
単なる第2版ではない、「極論で語る循環器内科」 - 楽園はこちら側

そして先日、極論で語るシリーズに岩田医師の本が加わりました。
極論で語る感染症内科 (極論で語る・シリーズ): 岩田 健太郎, 香坂 俊
上のリンクに内容紹介が記されています。
内容紹介を読むと岩田節炸裂。これは買いです。


と、ここまで書いてなんですが、買ってきたのはクルマ雑誌でした。

ニューモデルマガジンX 2016年3月号

フォルクスワーゲンがディーゼルエンジン車に違法ソフトウェアを使用していたことに関する記事がマガジンXに掲載されています。94ページから97ページまでです。

これから「排ガス戦争」が始まる 続・VWディーゼル問題考察

VW社のDE車が使用していたソフトウェアが違法だったことは分かったものの、プログラムがどういうエミッションコントロールをしていたのかとか、それのどういう部分が違法だったのかとか、2兆円の制裁金はどういう意味を持つものなのかとか、これからの排ガス規制はどいういう方向に進むのか、といった肝心な部分が新聞やテレビニュースでは理解できませんでした。それが分かっただけでも価値があります。
すこし引用します。

=== ここから ===
ここまでの話を整理すると、米国には排ガス規制とともにCAAが定めたオフサイクルの規制がある。サイクル試験と、オフサイクルの規定とがある。しかし、オフサイクル領域については数値の規定がない。数値規定は排ガス規制だけ。いっぽう日本と欧州は、3.5トン以上のディーゼル商用車にだけオフサイクルの規定があって、そこにはちゃんと上限の数値が書かれているが、乗用車はすべてその適用外でオフサイクル規定なし、ということだね。
=== ここまで ===

=== ここから ===
排ガス規制には違反していませんが、CAAには違反していました。CAAはオフサイクル規定なので、これは正しく言えば排ガス規制ではありません。排ガス規制とは再現性が担保された「サイクル試験」であり数値がきちんと定められたものを指します。
=== ここまで ===

=== ここから ===
世界的には、排ガス規制がどんどん厳しくなっている。欧州が言い出したRDE(リアル・ドライビング・エミッション)は、オフサイクル領域をなくし、実際の路上で遭遇するあらゆる走り方について規制の網をかけようとする発想だ。
=== ここまで ===

=== ここから ===
我われはVWを擁護したいわけではない。米国での件は明らかに犯罪だ。しかし、米国のルールそのものが、それ以外の国とはかなり違う。では、日本はどういう道を行くべきなのか。純粋に日本国内の排ガス規制はどうあるべきなのか。そこを報道がリードすべきであって、VWをいじめて喜んでいる場合じゃない。
=== ここまで ===

興味深い考察は、VWの件を米国対欧州の自動車覇権争いと認識していることです。
たしかにそういう切り口でみると合点がいくことが多くあります。

もちろん、これも買いです。