86(ZN6)に軽量クラッチ装着2024年03月20日 14:45

トヨタ86(ZN6)のクラッチを純正品から小倉クラッチ『ORC-309D-TT1213A-SE』に交換しました。

クラッチを社外品に交換するのはシビックR(EK9)に乗っていたときのTODAハイパワーシングルクラッチKIT以来の2度目です。
高速道路を含めいろいろと乗ってみたのですけど、軽量クラッチの操作に苦慮する場面がありました。交換後まだ日が浅いとはいえ、体が順応していないだけではなさそうです。軽量フライホイール&メタルシングルクラッチという点では同じようなものなのに、EK9のときはすぐ慣れたのに対し、ZN6ではもともと付きまとっていた独特の乗り難さが、クラッチ交換でより浮き上がる感じになってしまったからです。アクセル操作に対するエンジンレスポンスの鈍さです。

エンジン制御プログラムが関連しています。現代の商品として要求される仕様のためとは思いますが、右足のアクセル操作に対して実際に駆動力を発生させる部分で、瞬時には応答させない間(ま)を置くような設計がZN6には成されています。ストック状態で気になっていたアクセルレスポンスの鈍さは軽量クラッチへの交換で改善すると期待していたところ、予想に反し制御プログラムがそうさせていることを目立たせる結果となりました。軽量クラッチの素性の良さが伝わってくるだけにこの点は残念です。


外した純正パーツは持ち帰りました。
トヨタ86(ZN6)純正クラッチはEXEDY製
外したクラッチディスクにはEXEDYの刻印が見えます。
株式会社エクセディ
ORC-309Dのディスクとは見た目はけっこう違います。手に持ち振ってみると改めて純正ディスクの重みを感じます。

バネの中にもう一つバネがある
バネによる緩衝のおかげで、クラッチミート時の衝撃は和らいでくれます。構成部品が増えるため重量は嵩(かさ)みます。

純正クラッチディスクを側面から見る
綿菓子を指で摘んで引っ張ったような物は、ゴミではなく表面素材です。

さて。
別段の技術が要求されることなく様々な状況の中を卒なく運転できるよう設計されている純正クラッチは、不特定の人たちが操作することを踏まえると、とても優れた性能を備えていると実感します。それをあえて仕様の尖った製品に換えるというのは、趣味的な満足感をもたらす一方で、割り切った仕様ゆえ了承しなければならない難点があることを意識する必要があります。

トランスミッションの共振音(ギヤ鳴き)はその一つです。
前もって知らされていたため仰天したり動揺したりすることはなかったけど、私の86では2000から3000rpm辺りの減速時にギヤ鳴きがひどく現れるようになりました。予備知識がなければ面食らうほどの音量で、長い下り坂をエンブレ併用で走るときはうるさくて仕方ありません。
クラッチを提供しているメーカーは共振音の発生についてどのように説明しているのでしょう。調べてみました。

小倉クラッチウェブサイトから
=== ここから ===
Q:走行中ミッションから音がするのですが、何が原因ですか?
A:ミッションからの異音がする主な原因は主にトルク型エンジンに多く、強化クラッチを装着する事によりノーマルクラッチに対しセット重量が軽量化されミッションからの共振音が発生する場合があります。特にトルク型のエンジンの場合そのトルク領域で音が通常より大きく感じられる事があります。
推奨対策として粘度の高いミッションオイルをご使用いただく事でその共振音を緩和する事は出来ますが、機械的な問題の為完全に消音する事は出来ませんのでご了承下さい。
=== ここまで ===
ORC:FAQ

EXEDYウェブサイトから
=== ここから ===
Q:BNR34で、ツインクラッチへ交換したのですが、アイドリング時 加減速時駆動系から音が発生しますが、異常は有りませんか?
A:異常ではありません。
BNR34の純正フライホイールは、ダンパー機構を内装した特殊な構造になっています。
このダンパー機構により、エンジンの回転変動を吸収し、ミッションギヤの歯打ち音等、駆動系で発生する音・振動を緩和しています。
純正フライホイールを他のフライホイールに交換すると、上記のダンパー機構も取り除くことになりますので、駆動系から発生する音・振動を感じることになります。
(以下略)
=== ここまで ===
こだわり Q&A | Products | EXEDY RACING CLUTCH

NISMOウェブサイトから
=== ここから ===
商品に関するご注意
●NISMO軽量フライホイールは、クラッチレスポンスの向上、対応出力の向上を目的に設計・製作しているため、日産純正品と比較してトランスミッションやべリングから発生する共振音(ガラガラ音)が伝わりやすい場合があります。特にアイドリング時および2000rpmあたりからの加減速時にトランスミッション等よりギアノイズが発生する場合がありますが、品質・性能上の問題はありません。あらかじめご了承ください。共振音等が気になる方には、純正フライホイールの使用をおすすめいたします。
=== ここまで ===
NISMO | NISMO PARTS CATALOGUE | Lightweight Flywheel/軽量フライホイール

軽量クラッチへの換装は、操作フィーリング向上の点ではとても満足しています。
たとえば軽量クラッチディスクの恩恵です。クラッチディスクはインプットシャフトと繋がっており、インプットシャフトはカウンターシャフトと噛合しながら回転運動しています。クラッチディスクが軽くなると回転質量が小さくなるため、クラッチを切った際の回転落ちは早くなり、シフトアップするときの一連の操作時間は短くなります。バイクのドグミッションのようにはいきませんが、素早くギヤが入る感触はスポーツ走行の楽しさを一段と引き上げてくれます。これだけでも換えた価値は十分あると言えましょう。またクラッチを切ったとき聴こえるラトルノイズ(rattle noise)は、自分のクルマがレーシングカーになったような錯覚を与えてくれて気分が良くなります。


話を変えます。
楽器のドラムの話です。ドラムのハイハット奏法にオープンとクローズがあります。オープンハイハットを裏拍で鳴らすとノリノリのリズムになります。裏打ちハイハットです。
裏拍でオープンハイハットを鳴らし、表拍でハイハットを閉じます。
好きな曲ではこんなのがあります。

Rock 'N' Roll Jelly - YouTube
TRF / BOY MEETS GIRL - YouTube
Asian Kung-Fu Generation - Re:Re: - YouTube

86のアクセル操作に対する反応の遅れはちょうどこの裏打ちのリズム感に似ています。ほんのわずかな間ですけど、「ン」という一瞬の溜めを体は感じ取ります。音楽のときは心地よさのベースになるけど、ドライビングに関しては無反応な間合いは不快なストレスの原因になります。発進のときは特にそうです。アクセル操作に対しては、一発めの表拍で反応すべきなのです。
SUZUKI GSX-R750(1986年式/G型)に乗ったことがあります。
VM型と呼ばれる強制開閉式キャブレターが付いているバイクで、右手は疲れるけど、レスポンスの良さはピカイチでした。そこまでは望まないけど、スロットル開度に忠実に比例する制御がスポーツ走行には欠かせないと思います。
コンピュータに手を加えないといけないのかなぁ・・・。

おまけ。
作業を依頼したのは愛知県長久手市にある株式会社ラックです。
ラックの駐車場にラリー三河湾に参戦したKANTA選手の車両が置いてありました。






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